給与テーブルとは?作り方と見直す際のポイント
社員の給与を決めるとき、「入社時の金額から何となく毎年上げている」「昇給額は社長や上司の判断で決めている」という会社もあるのではないでしょうか。
社員数が少ないうちは個別に給与を決められても、組織が大きくなるにつれて「同じような仕事なのに給与差が大きい」「昇格するといくら上がるのか分からない」「中途採用者の給与だけ高くなっている」といった問題が起こりやすくなります。
こうしたときに、給与を一定のルールで整理するために使われるのが給与テーブルです。給与テーブルを作ることで、等級や役割に応じた給与水準を整理しやすくなります。ただし、表だけを作っても、人事評価や昇格ルールとつながっていなければうまく機能しません。
この記事では、給与テーブルの基本的な考え方から作り方、見直すタイミング、経営者が注意したいポイントまで解説します。
⇒ 給与テーブルや等級制度の作り方に迷ったら。人事制度について専門家に相談する
給与テーブルとは?
給与テーブルとは、社員の等級や役割、能力などに応じて、基本給の水準や昇給の幅を整理した表のことです。「賃金表」「基本給表」と呼ばれることもあります。
たとえば、1等級から5等級までの等級制度がある会社で、それぞれの等級に給与の上限・下限や複数の号俸を設ける方法があります。
| 等級 | 想定する役割 | 基本給のイメージ |
|---|---|---|
| 1等級 | 一般社員・新人 | 23万~27万円 |
| 2等級 | 一人で業務を遂行 | 26万~31万円 |
| 3等級 | チームの中核 | 30万~36万円 |
| 4等級 | 管理職候補・リーダー | 35万~42万円 |
| 5等級 | 管理職 | 41万~50万円 |
※金額は説明のための例です。
このような表があれば、「現在どの等級にいるのか」「昇格するとどの程度給与が変わるのか」を整理できます。
給与テーブルを作る目的
給与テーブルの目的は、単に給与額を一覧にすることではありません。大きな目的の一つは、給与を決める基準を会社として統一することです。
給与を個別交渉だけで決めていると、採用時期や上司の判断によって金額にばらつきが出やすくなります。特に中途採用が増えると、「後から入った人の方が給与が高い」といった逆転も起こりやすくなります。
給与テーブルを設ければ、社員の役割や能力、職務などに応じて、一定の範囲の中で給与を決めやすくなります。社員にとっても、「次の等級に上がればどの程度給与が上がるのか」という見通しを持ちやすくなります。給与制度とキャリアパスがつながることで、昇格や成長の目標も示しやすくなります。
給与テーブルと等級制度・評価制度の関係
給与テーブルを作る際に最も重要なのが、等級制度や評価制度とのつながりです。
たとえば、「3等級は月給30万~36万円」とだけ決めても、誰を3等級にするのかが曖昧であれば給与は決まりません。
そこで、まず等級制度で、
「一人で担当業務を完結できる」
「後輩を指導できる」
「チームの目標達成に責任を持つ」
といった役割や期待水準を定めます。
そのうえで、評価制度によって社員の成果や能力、行動などを評価し、昇給や昇格に反映します。
つまり、
等級制度=社員に期待する役割を決める
評価制度=その役割をどの程度果たしたかを見る
給与テーブル=等級・評価に応じて給与水準を決める
という関係です。
給与テーブルだけを作っても、「誰をどこに置くのか」「どうすれば次の給与に上がるのか」が決まっていなければ、結局は経営者や上司の判断に戻ってしまいます。
給与テーブルの主な設計パターン

給与テーブルにはいくつかの設計方法があり、何を基準に給与を決めるかによって仕組みが変わります。自社の等級制度や評価制度、組織の規模などに合わせて選ぶことが大切です。
等級ごとに給与レンジを設ける
比較的分かりやすいのが、等級ごとに給与の下限と上限を設定する方法です。たとえば2等級を26万~31万円、3等級を30万~36万円と定めます。
同じ等級の中でも経験や評価によって給与差をつけられるため、柔軟に運用できます。ただし、同じ等級内で何を基準に給与額を決めるのかが曖昧だと、昇給時に判断がばらつきやすくなります。
等級の中に号俸を設定する
等級の中をさらに細かな段階に分ける方法もあります。たとえば3等級の中に1号俸から20号俸までを設け、評価結果に応じて「今年は2号俸上げる」といった形で昇給させます。
給与の上がり方をルール化しやすい一方、号俸を細かく設定しすぎると制度が複雑になり、管理の負担が大きくなることがあります。
職務・役割ごとに給与水準を設定する
職務内容や責任の大きさを基準に給与を決める方法もあります。たとえば営業担当、営業マネージャー、部長など、それぞれの職務や役割に応じて給与水準を設定します。
職務や役割を軸に人事制度を設計している会社では取り入れやすい方法です。どの設計が適しているかは、会社の規模や組織構造、採用方針などによって異なります。
給与テーブルを作る4つのステップ
給与テーブルの設計方法を決めたら、次は実際の給与水準や運用ルールを組み立てていきます。いきなり金額を並べるのではなく、まず現在の給与実態を把握し、等級や評価制度との関係を整理することが重要です。
1. 現在の給与を一覧にする
まず、社員ごとの基本給、役職、等級、年齢、勤続年数などを一覧にします。ここで確認したいのは、「同じような役割を担っている社員の給与に大きな差がないか」「役職と給与水準が逆転していないか」といった現在の給与バランスです。
実際の給与分布を確認せずに新しいテーブルを作ると、新制度に当てはまらない社員が多数出てしまうことがあります。まずは現状を把握するところから始めましょう。
2. 等級や役割を整理する
次に、社員をどのような基準で区分するかを決めます。職能を基準にするのか、職務を基準にするのか、役割を基準にするのかによって給与テーブルの設計も変わります。
「一般社員」「主任」「課長」といった肩書だけで区分するのではなく、それぞれにどの程度の業務遂行能力や責任を求めるのかまで整理しておくことが重要です。
3. 各等級の給与水準を決める
等級や役割が整理できたら、それぞれの給与レンジを設定します。現在の社員の給与だけでなく、採用市場の給与水準や最低賃金、会社全体の人件費なども考慮します。給与水準を低く設定しすぎれば採用競争力が低下する可能性があり、反対に高く設定しすぎれば、将来の昇給によって人件費負担が大きくなることがあります。
現在支払える金額だけでなく、数年後も無理なく運用できるかという視点が必要です。
4. 昇給・昇格ルールを決める
最後に、給与がどのような条件で上がるのかを決めます。たとえば「評価Aなら2号俸、評価Bなら1号俸上げる」「次の等級に昇格した場合は、その等級の給与レンジに移行する」といったルールです。
評価制度と昇給ルールがつながっていないと、給与テーブルがあっても、昇給のたびに経営者や上司が個別判断することになります。給与テーブルを実際に機能させるためには、評価・昇給・昇格の関係まで一緒に設計することが重要です。
給与テーブルを作る際の注意点
給与テーブルは、単に会社が自由に給与額を並べればよいわけではありません。
就業規則・賃金規程との整合性を確認する
労働基準法第89条では、常時10人以上の労働者を使用する事業場について、賃金の決定・計算・支払方法や昇給に関する事項を就業規則に記載することが求められています。(参照:労働基準法 第八十九条(作成及び届出の義務)| e-Gov法令検索)
給与テーブルを新しく導入したり、昇給ルールを変更したりする場合には、就業規則や賃金規程と内容が矛盾していないかを確認する必要があります。社内用のExcelだけ変更して、規程には以前の給与ルールが残っている、といった状態は避けたいところです。
雇用形態による不合理な待遇差に注意する
給与制度を設計するときは、正社員だけを見るのではなく、パート・有期契約社員などとの待遇差にも注意が必要です。
厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインでは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差について、不合理な差を設けないことが求められています。2026年10月にはガイドライン等も改正され、待遇差について説明できる制度運用がより重要になっています。
「正社員だから高い」「契約社員だから低い」という区分だけではなく、職務内容や責任、配置変更の範囲などを踏まえて給与差を説明できるようにしておく必要があります。
新しい制度で給与が下がる社員に注意する
給与テーブルを導入すると、現在の給与が新しいテーブルより高い社員が出ることがあります。たとえば本来3等級なら35万円が上限なのに、現在40万円を支払っている社員がいるケースです。
このとき、給与テーブルを作ったからという理由だけで直ちに40万円から35万円へ下げられるとは限りません。賃金の引き下げは労働条件の不利益変更に関わるため、慎重な対応が必要です。
制度移行時には、現在の給与を維持する「調整給」を設けるなど、一定の経過措置を取る方法もあります。
給与テーブルを見直すタイミング
給与テーブルは、一度作れば永久に使えるものではありません。会社の規模や市場の給与水準が変われば、制度も見直す必要があります。
特に確認したいのは、採用時の提示給与が給与テーブルを超えるケースが増えてきたときです。人材を採用するために「本来2等級は30万円までだが、採用できないので35万円を提示する」といった例外が増えている場合、現在の給与テーブルが市場水準と合っていない可能性があります。
ほかにも、昇給を続けた結果、多くの社員が各等級の上限付近に集まっている場合や、管理職と一般社員の給与差がほとんどなくなっている場合も見直しのサインです。会社の業績が成長し、以前より高い役割を社員に求めるようになった場合にも、等級制度と合わせて確認した方がよいでしょう。
給与テーブルが機能しなくなる会社の特徴
制度を導入したものの、数年後には誰も給与テーブルを見なくなっている会社もあります。よくある原因は、「例外」を増やしすぎることです。採用のたびに例外給与を設定し、退職を引き止めるたびに個別昇給を行っていると、テーブル上の金額と実際の給与が徐々に離れていきます。
もう一つは、評価制度と給与テーブルがつながっていないケースです。評価制度ではA・B・Cという評価を付けているものの、その評価が昇給額とどう関係するのか決まっていなければ、社員からすると「評価は何のためにあるのか」が分かりません。給与テーブルはそれ単体で運用するのではなく、等級・評価・昇給・昇格を一つの人事制度として設計することが重要です。
以前は、採用時の条件や引き止めのための昇給をその都度判断していたため、気づけば給与テーブルと実際の給与にかなり差が出ていました。そこで人事コンサルに相談し、現在の給与分布を整理したうえで、等級ごとの給与レンジや昇給ルールを見直しました。給与テーブルだけでなく、評価や昇格の基準まで一緒に整理したことで、経営側も社員に給与の考え方を説明しやすくなりました。
給与テーブルは社員に公開するべき?
給与テーブルをどこまで社員に公開するかも、企業によって方針が分かれます。
すべての給与額まで公開する会社もあれば、等級ごとの給与レンジだけを公開する会社もあります。重要なのは、社員が「どうすれば給与が上がるのか」を理解できる状態にすることです。給与テーブルを非公開にしたまま、「評価が上がれば昇給する」とだけ説明しても、社員からするとどの程度昇給するのか分かりません。逆に、金額だけ公開して昇格基準が不明確でも、制度への納得感は高まりません。
給与レンジ、等級の定義、評価基準、昇格条件などをどの範囲まで説明するかをセットで考える必要があります。
給与テーブルを見直すときは人事制度全体を確認する
給与について社員から不満が出ると、「基本給をいくら上げるか」という話になりがちです。
しかし、本当の問題が給与額そのものではないこともあります。たとえば、「同じ仕事なのに給与が違う」という不満の背景には、等級基準が曖昧な問題があるかもしれません。「頑張っても給与が上がらない」という不満であれば、評価と昇給が連動していない可能性があります。
給与テーブルだけを修正しても、こうした問題は解決しません。
給与制度を見直すときは、どのような人材を評価するのか、どの役割にいくら支払うのか、どのような成果や成長を昇給につなげるのかという人事制度全体の考え方を整理する必要があります。
まとめ
給与テーブルは、社員の等級や役割などに応じて、基本給の水準や昇給の幅を整理するための仕組みです。給与の決め方を一定のルールにすることで、経営者や上司ごとの判断のばらつきを抑え、社員にも今後の給与やキャリアの見通しを示しやすくなります。
ただし、給与テーブルだけを作れば人事制度が完成するわけではありません。誰をどの等級にするのか、評価結果をどのように昇給へ反映するのか、どの条件で昇格するのかまで決めて、初めて制度として機能します。
特に、社員数が増えて給与の個別管理が難しくなってきた会社や、中途採用者と既存社員の給与バランスに差が出てきた会社は、給与テーブルを見直すタイミングかもしれません。現在の給与額だけを見るのではなく、等級制度・評価制度・昇給制度まで含めて整理し、自社の成長に合わせて運用できる仕組みになっているかを確認してみましょう。
1分で人事制度診断ができる!
全9問いまの状態に、いちばん近いものをお選びください。
Q1 / 9
簡易診断の結果
仕組み化スコア
/ 16
属人化リスク
本診断(40問)での目安
Q1の手ごたえと、実態の差
次に効く3つ
回答は申込ページに引き継がれます。お申し込み前にメールは送信されません。
