会社を辞めると社会保険料率の自己負担はいくら増える?人事担当が知るべき退職時の保険料負担

会社を辞めると社会保険料率の自己負担はいくら増える?人事担当が知るべき退職時の保険料負担

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「退職後の社会保険料はどれくらいかかるのか」という質問に、人事担当者として正確に答えられますか。社会保険料率の理解は、退職を検討している社員への適切なアドバイスに不可欠です。

実は、会社を辞めると社会保険料の自己負担額は平均的な給与の場合で月額2万円から4万円程度増加するケースがあります。これは、在職中は会社が半額を負担していた保険料を、退職後は全額自己負担する必要があるためです。さらに、国民健康保険や国民年金への切り替えにより、保険料の計算方法も大きく変わります。

本記事では、人事担当者が退職予定者に対して正確な情報を提供できるよう、社会保険料率の仕組みから具体的な負担増加額、さらには退職者への説明方法まで詳しく解説します。従業員の人生設計をサポートする重要な知識として、ぜひ最後までお読みください。

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目次

会社員の社会保険料率の基本構造

会社員が加入する社会保険は、健康保険、介護保険(40歳以上)、厚生年金保険、雇用保険で構成されています。
※労災保険は会社が全額負担する制度であり、一般に「社会保険料」として給与から控除される保険とは区別されます。

2025年度の社会保険料率一覧

現在の社会保険料率は以下の通りです。これらは標準報酬月額(給与をもとに決定される等級)に対して計算されます。

保険の種類保険料率従業員負担会社負担
健康保険(協会けんぽ・東京都)9.91%4.955%4.955%
介護保険(40歳以上)1.59%0.795%0.795%
厚生年金保険18.30%9.15%9.15%
雇用保険1.55%0.6%0.95%

例えば、標準報酬月額が30万円の従業員の場合、健康保険料は約29,730円(本人負担 約14,865円)、厚生年金保険料は54,900円(本人負担27,450円)となります。40歳以上であれば介護保険料は約4,770円(本人負担 約2,385円)も加わります。

参考:

会社負担の重要性を理解する

人事担当者として特に認識すべきなのは、会社が実質的に従業員の保険料の半額を負担している点です。従業員が給与明細で目にする社会保険料は実際の保険料の半分に過ぎず、会社は同額を法定福利費として負担しています。

この事実を退職予定者に伝えることで、在職中の待遇の価値を再認識してもらうことができます。社内研修において、給与以外の会社負担項目を明確に説明することは、従業員の定着率向上にもつながる重要な取り組みです。

退職後の社会保険料はどう変わるのか

会社を退職すると、健康保険と年金の加入先が変わり、保険料の負担構造も大きく変化します。退職後の選択肢と、それぞれの保険料負担について詳しく見ていきましょう。

健康保険の3つの選択肢と保険料

退職後の健康保険には、主に以下の3つの選択肢があります。

1. 国民健康保険への加入 市区町村が運営する国民健康保険に加入する場合、保険料は前年の所得をもとに計算されます。料率は自治体によって異なりますが、東京都の場合、医療分・後期高齢者支援金分・介護分(40歳以上)を合わせた所得割は概ね9〜10%程度です。

重要なのは、国民健康保険には会社負担がなく、全額が自己負担となる点です。年収400万円程度の方であれば、年間40万円前後の保険料となり、月額換算で約3.3万円の負担となります。

2. 健康保険の任意継続 退職前に2ヶ月以上継続して健康保険に加入していた場合、退職後2年間は元の健康保険を任意継続できます。ただし、会社負担がなくなるため、在職中の約2倍の保険料を全額自己負担します。

標準報酬月額30万円の場合、任意継続の健康保険料は月額約29,730円となります。
40歳以上で介護保険該当者の場合は、介護保険料約4,770円が加算され、合計で約34,500円程度となります。

3. 家族の扶養に入る 年収見込みが130万円未満などの条件を満たせば、配偶者や親の健康保険の被扶養者になることができ、この場合は保険料負担がありません。

年金制度の切り替えと保険料負担

厚生年金から国民年金への切り替えも大きな変化をもたらします。

項目在職中(厚生年金)退職後(国民年金)
月額保険料(2025年度)27,450円(標準報酬30万円の場合)16,980円
本人負担額27,450円16,980円(全額)
会社負担額27,450円なし
実質的な年金原資54,900円16,980円

国民年金の保険料は定額制で、2025年度は月額16,980円です。一見すると厚生年金の本人負担額より安く見えますが、厚生年金では会社も同額を負担していたため、実質的な年金原資は大幅に減少します。

将来受け取れる年金額にも大きな差が生じます。厚生年金は国民年金(基礎年金)に上乗せされる形で支給されるため、厚生年金加入期間が短くなれば、老後の年金受給額も減少することになります。

参考:日本年金機構「国民年金の保険料」

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具体的なケーススタディ:自己負担増加額の試算

実際に会社を辞めると、社会保険料の自己負担はどれくらい増えるのでしょうか。年収別に具体的なシミュレーションを行います。

年収400万円のケース

在職中の社会保険料負担(月額)

  • 標準報酬月額:280,000円
  • 健康保険料:約14,000円
  • 厚生年金保険料:25,620円
  • 雇用保険料:約1,600円前後
  • 合計:約41,220円

退職後の保険料負担(月額)

  • 国民健康保険料:約33,000円(東京都の場合、前年所得ベース)
  • 国民年金保険料:16,980円
  • 合計:約49,980円

負担増加額:約8,360円/月(年間約10万円)

年収600万円のケース

項目在職中退職後差額
健康保険料25,000円50,000円(任意継続)+25,000円
年金保険料45,750円16,980円-28,770円
合計70,750円66,980円-3,770円

在職中は会社も同額を負担していたため、社会全体として拠出される保険料総額は大きくなります。ただし、従業員本人の手取りベースでは必ずしも単純に増減を比較できるものではありません。

注意すべき「翌年の国民健康保険料」

退職時に特に注意が必要なのは、国民健康保険料が前年の所得をもとに計算される点です。退職1年目は在職中の収入で保険料が計算されるため、収入がなくても高額な保険料を請求される可能性があります。

年収600万円で退職した場合、翌年の国民健康保険料は年間60〜70万円(月額5〜6万円)になることもあります。この点を退職予定者に事前に説明しておくことは、人事担当者の重要な役割です。(東京都23区で単身の場合の一例)

人事担当者が押さえるべき退職時の説明ポイント

退職者への社会保険料に関する説明は、人事担当者の専門性が問われる場面です。正確かつ丁寧な説明により、退職者の不安を軽減し、円満な退職につなげることができます。

退職面談で伝えるべき5つの重要事項

退職が決まった従業員に対しては、以下の情報を必ず伝えましょう。

1. 会社負担分の終了について 「在職中、会社は皆さんの社会保険料と同額を負担していました。退職後はこの会社負担がなくなります」と具体的な金額を示して説明します。

2. 健康保険の選択肢 国民健康保険、任意継続、家族の扶養の3つの選択肢と、それぞれのメリット・デメリットを説明します。特に任意継続は退職日の翌日から20日以内に手続きが必要な点を強調しましょう。

3. 国民年金への切り替え義務 退職後14日以内に市区町村で国民年金への加入手続きが必要であることを伝えます。手続きを怠ると将来の年金受給に影響する可能性があります。

4. 翌年の国民健康保険料の高額化リスク 前年所得ベースで計算されるため、退職1年目は高額になる可能性があることを事前に説明します。減免制度の存在についても触れておくと親切です。

5. 離職票と雇用保険の手続き 自己都合退職の場合でも、一定の条件下では特定理由離職者として失業給付の待機期間が短縮される場合があることを伝えます。

人事担当者向け社内研修の重要性

社会保険料率や退職時の手続きに関する知識は、人事担当者全員が習得すべき基本スキルです。しかし、制度改正が頻繁に行われるため、定期的な研修が欠かせません。

企業内研修を徹底することで、以下のメリットが得られます。

  • 退職者への説明内容が人事担当者間で統一される
  • 最新の保険料率や制度変更に全員が対応できる
  • 従業員からの質問に即座に正確な回答ができる
  • 会社の信頼性向上と従業員満足度の向上につながる

研修では、実際の退職ケースを想定したロールプレイングを取り入れ、説明スキルを磨くことが効果的です。また、社会保険労務士など外部専門家を招いた勉強会を定期的に開催することで、専門性の高い人事部門を構築できます。

退職を思いとどまらせるための情報提供

人事担当者として、退職希望者に対して社会保険料負担の実態を説明することは、単なる手続き説明以上の意味を持ちます。会社が提供している福利厚生の価値を再認識してもらう機会にもなるのです。

「見えない給与」としての会社負担

標準報酬月額30万円の従業員の場合、会社は月額約4.3万円、年間約52万円もの社会保険料を負担しています。この金額を「見えない給与」として明示することで、総報酬の価値を理解してもらえます。

年収400万円の従業員であれば、実質的な会社からの総支給額は450万円以上になっているという事実を、具体的な数字で示すことが重要です。

長期的なキャリア形成の視点

厚生年金の加入期間が短くなることで、将来の年金受給額にどれほどの影響があるかを試算して示すことも効果的です。

例えば、30歳から60歳までの30年間厚生年金に加入した場合と、途中で5年間のブランクがある場合では、年金受給額に年間10〜20万円程度の差が生じることもあります。この情報は、キャリアの中断を検討している従業員にとって重要な判断材料となります。

まとめ

社会保険料率の変化と退職後の自己負担増加について、人事担当者が正確に理解し説明できることは、従業員との信頼関係構築に不可欠です。本記事で解説した通り、会社を辞めると社会保険料の自己負担は月額数千円から数万円増加し、さらに会社負担分がなくなることで実質的な保障内容も変化します。

重要なポイントを再確認しましょう。

  • 在職中は会社が社会保険料の半額を負担しているため、退職後は実質2倍の負担感になる
  • 国民健康保険料は前年所得ベースで計算されるため、退職1年目は高額になる可能性がある
  • 健康保険には3つの選択肢があり、それぞれメリット・デメリットがある
  • 厚生年金から国民年金への切り替えで、将来の年金受給額にも影響が出る

人事担当者として、これらの情報を分かりやすく説明するスキルを磨くことが求められます。そのためには、企業内研修を徹底し、最新の制度変更に常に対応できる体制を整えることが重要です。

退職を検討している従業員に対して、社会保険料負担の実態を正確に伝えることで、より良い判断をサポートできます。また、在職中の福利厚生の価値を再認識してもらうことで、従業員の定着率向上にもつながるでしょう。

今日から、退職面談での説明内容を見直し、人事部門全体で社会保険に関する知識を共有する取り組みを始めてみませんか。正確な情報提供ができる人事部門こそが、従業員から信頼される組織の基盤となります。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の状況については、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。