【令和8年最新】社会保険の加入義務とは?企業・従業員の条件や今後の改正動向を解説
KEYWORDS 社会保険
企業における社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入義務は、法改正により段階的に見直されてきました。
特に近年は、パート・アルバイトなど短時間労働者への適用が拡大しており、「これまで対象外だと思っていた従業員が、実は加入義務の対象になっていた」というケースも少なくありません。
本記事では、社会保険の加入義務について、事業所側・従業員側それぞれの判断ポイントに加え、未加入時のリスクや今後の制度改正の動向を解説します。
目次

社会保険の加入義務とは
社会保険とは、一定の要件を満たす事業所と、その事業所に使用される従業員に対して、法律で加入が義務付けられている公的保険制度です。加入義務がある場合、企業は従業員の意思にかかわらず所定の手続きを行わなければなりません。
企業において社会保険の加入義務があるかどうかは、「事業所としての社会保険の加入義務」と、「従業員一人ひとりの加入義務」に分けて考える必要があります。
事業所が適用事業所に該当していることに加え、従業員個人が加入要件を満たしている場合に、はじめて当該従業員を社会保険の被保険者とすることになります。
事業所における社会保険の加入義務
事業所として社会保険に加入する義務があるかどうかは、法人であるか、個人事業所であるかによって判断基準が異なります。
法人の場合
すべての法人は、従業員が1人でもいれば強制適用事業所となり、社会保険への加入義務が生じます。この点は、代表者1人のみの、いわゆる「ひとり社長の法人」であっても同様です。
対象となる法人は、会社法上の会社(株式会社・合同会社・合資会社・合名会社)に限られません。医療法人、社団法人、財団法人、NPO法人など、法人格を有する事業所はすべて対象となります。
個人事業所の場合
個人事業所では、法定の17業種に該当する事業者が、常時5人以上の従業員を雇用している場合に、強制適用事業所となります。一方で、法定17業種に該当しない業種については、従業員数にかかわらず、社会保険の加入義務はありません。
【個人事業所の社会保険への加入義務】
| 常時5人以上 | 5人未満 | |
| 法定17業種 | 強制適用 | 任意 |
| 上記以外の業種 | 任意 | 任意 |
【法定17業種】
- 物の製造、加工、選別、包装、修理または解体の事業
- 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体またはその準備の事業
- 鉱物の採掘または採取の事業
- 電気または動力の発生、伝導または供給の事業
- 貨物または旅客の運送の事業
- 貨物積みおろしの事業
- 焼却、清掃またはと殺の事業
- 物の販売または配給の事業
- 金融または保険の事業
- 物の保管または賃貸の事業
- 媒介周旋の事業
- 集金、案内または広告の事業
- 教育、研究または調査の事業
- 疾病の治療、助産その他医療の事業
- 通信または報道の事業
- 社会福祉事業及び更生保護事業法に定める更生保護事業
- 弁護士、公認会計士などによる法律または会計の業務を行う事業
【法定17業種に該当しない主な業種】
農業・林業・漁業、宿泊業・飲食サービス業、洗濯・理美容・浴場業、娯楽業、デザイン業、警備業、ビルメンテナンス業、政治・経済・文化団体、宗教など
任意で社会保険を適用するには
事業所として社会保険への加入義務がない場合でも、任意適用の申請を行うことで、社会保険に加入することが可能です。任意適用とするためには、従業員の半数以上が適用事業所となることに同意していることが必要となります。
従業員における社会保険の加入義務

続いて、個々の従業員における社会保険の加入義務について確認します。
正社員・フルタイム労働者
正社員やフルタイムで雇用される従業員は、原則として全員が社会保険の加入対象です。
また、正社員でなくても、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、通常の正社員の4分の3以上である場合には、社会保険の加入対象となります。
パート・アルバイト(短時間労働者)
パートやアルバイトなど、労働時間や日数が正社員の4分の3に満たない場合であっても、以下の5つの要件をすべて満たす場合には、社会保険の加入義務が発生します。
特定適用事業所で雇用される従業員数であること
その企業の厚生年金の被保険者数が51人以上であることが条件になります。
週の所定労働時間が20時間以上であること
その短時間労働者の週の所定労働時間が、20時間以上である必要があります。ここでいう所定労働時間とは、就業規則や雇用契約書等により定められた「通常の週に勤務すべき時間」を指し、実際の実働時間ではありません。所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合は、その周期における1週間の平均時間で判断します。
所定内賃金が月額88,000円以上であること
その短時間労働者の所定内賃金が、月額88,000円以上であることが条件です。日給や時給で支払われている場合は、月額に換算して判定します。なお、賃金には基本給や各種手当を含みますが、以下のものは含まれません。
- 臨時に支払われる賃金(賞与、結婚手当など)
- 最低賃金法で算入しないとされている賃金(家族手当、通勤手当など)
- 時間外・深夜・休日労働による割増賃金
雇用期間が2か月を超える見込みであること
その短時間労働者の雇用期間が、2か月を超える見込みがあることが条件になります。就業規則や雇用契約書に契約更新の可能性が明記されている場合や、同様の契約で過去に更新実績がある場合には、最初の契約期間が2か月以内であっても、使用開始日から社会保険の加入対象となります。
学生でないこと
高校、大学、専修学校、修業年限1年以上の各種学校に在学する昼間学生は、原則として対象外です。一方で、休学中、定時制、通信制、夜間学部、社会人大学院生などは、学生であっても社会保険の加入対象となります。
適用対象外となる働き方もある
次のような働き方については、社会保険の適用除外とされています。
- 日雇い労働者
- 季節的業務(4か月以内の事業)の労働者
ただし、日雇い労働者であっても1か月を超えて継続雇用される場合には、その日から社会保険への加入が必要です。また、季節的業務であっても、4か月内の業務期間を超えて継続雇用される見込みがあれば、当初から加入が必要となります。
社会保険の加入義務の今後の改正内容
令和7年6月に成立した改正法により、社会保険の加入義務は今後さらに拡大されます。
今回の改正では、主に次の3点において見直しが行われており、それぞれ施行時期が異なります。
個人事業の適用拡大
個人事業所における社会保険の加入要件のうち、法定17業種という業種要件は、2029年(令和11年)10月から撤廃される予定です。改正後は、常時5人以上の従業員を使用している場合、業種にかかわらず強制適用事業所となります。
なお、2029年10月時点で既に開業している既存の個人事業所については、当分の間、経過措置として適用対象外とされる見込みです。
短時間労働者の企業規模要件は「縮小」から「撤廃」へ
短時間労働者の加入要件のひとつである企業規模要件についても、段階的な見直しが行われます。
現行は、50人以下の事業所で働く短時間労働者は社会保険の対象となりませんが、これを10年かけて段階的に50人→35人→20人→10人…と減らし、2035年10月には企業規模による要件がなくなる予定です。
短時間労働者の賃金要件を撤廃
短時間労働者の加入条件のひとつである賃金要件(月額88,000円、いわゆる「106万円の壁」)についても、撤廃が予定されています。現行制度では、週20時間以上勤務していても、月額賃金が88,000円未満の場合は社会保険の加入対象となりません。
しかし、改正後は週に20時間以上働く場合、賃金にかかわらず対象になり得ることに注意が必要です。施行開始は3年以内とされており、地域別最低賃金の引き上げを見極めながら行われます。
社会保険に未加入である場合の企業リスク

社会保険の加入義務があるにもかかわらず未加入である場合、企業には次のようなリスクが生じます。
行政指導
社会保険への加入義務がある事業所が未加入であることが判明した場合、社会保険への加入指導や、場合によっては立入検査が行われることがあります。
保険料の遡及徴収
社会保険料を過去2年分まで遡って徴収される可能性があります。
刑事罰
社会保険に意図的に加入しなかった場合や、虚偽の届出を行った場合には、法令に基づき、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
参考:健康保険法第208条|e-Gov法令検索
参考:厚生年金保険法第102条 | e-Gov法令検索
まとめ
本記事では、社会保険の加入義務について、事業所と従業員それぞれの判断基準、今後の改正点、未加入時のリスクなどを解説しました。社会保険の適切な対応は、企業としての法令遵守にとどまらず、従業員の安心感にもつながります。今後の加入義務の判断に役立てば幸いです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の状況については、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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