内部通報制度とは?法改正のポイントや企業に求められる対応を解説
内部通報制度は、企業の不正を早期に発見し、通報者を守りながら健全な組織運営を続けるための仕組みです。整備は進んでいても、匿名通報への対応や調査フロー、情報漏えい防止など、実務では判断に迷う場面も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、内部通報制度の基本から、公益通報者保護法の義務、導入の流れ、通報後の対応フローについて詳しく解説します。
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目次
- 内部通報制度とは
- 内部通報とは
- 公益通報者保護法と消費者庁ガイドラインで求められる事業者の義務
- 2026年12月1日施行の公益通報者保護法改正のポイント
- 内部通報制度を導入する流れ
- 通報を受けた後の対応フロー
- まとめ

内部通報制度とは

内部通報制度とは、組織内の不正行為や法令違反を、従業員が社内外の窓口へ知らせる仕組みです。近年は消費者庁のガイドラインに沿った整備が進み、義務化の対象企業も拡大しています。パワハラなど職場トラブルの早期発見にもつながる制度です。
ここからは、内部通報制度の目的と、企業に必要とされる理由を詳しく解説します。
内部通報制度の目的
内部通報制度の目的は、社内の不正や法令違反を早期に発見し、調査と是正につなげることです。放置すれば被害が拡大し、企業の信頼も損なわれかねません。
そこで通報者保護や不利益取扱いの防止をルール化し、安心して声を上げられる環境を整えます。内部通報制度は、企業が健全な経営を継続するための土台といえるでしょう。
内部通報制度が必要とされる理由
内部通報制度が必要とされる理由は、以下の3つです。
- 不正の早期発見
- 信用失墜の防止
- 従業員保護
内部通報制度を導入している事業者の不正発見の端緒は、内部通報が最多で77%と、内部監査や上司による業務チェックを上回っています。近年はSNSで情報が瞬時に拡散するため、対応が遅れるほど企業への打撃は大きくなるでしょう。だからこそ内部通報制度は、企業を守るための重要な仕組みとして必要とされています。
内部通報とは
内部通報とは、労働者や役員などが、勤務先で起きた法令違反や不正行為を、社内窓口や行政機関へ知らせる行為です。公益通報者保護法では、通報を理由とした解雇や降格などの不利益取扱いから、通報者を保護する規定が設けられています。
ここからは、対象者や対象内容、通報先など内部通報について詳しく解説します。
内部通報の対象になる人
内部通報の対象になる人には、労働者、派遣労働者、退職後1年以内の退職者、役員などが含まれます。現行法では正社員や派遣社員、アルバイト、パートタイマーなどの従業員、役員、退職者が保護の対象です。
| 対象者 | 保護の範囲 |
|---|---|
| 労働者 | 正社員・派遣・パート・アルバイト |
| 退職者 | 退職後1年以内の者 |
| 役員 | 法人の役員全般 |
| フリーランス | 業務委託関係者、終了後1年以内含む |
2026年12月1日施行の改正では、新たにフリーランスが加わり、業務委託契約の解除などが禁止されます。通報できる人の範囲は、今後さらに広がっていくでしょう。
内部通報の対象になる内容
内部通報の対象になる内容は、国民の生命や身体、財産などの保護に関わる法律違反です。具体的には、犯罪行為や過料対象行為など、約500の法律に規定された行為が該当します。
社内で起こりやすい具体例は、以下の表を参考にしてください。
| 分類 | 具体例 |
|---|---|
| ハラスメント | パワハラ、セクハラなど |
| 不正会計 | 粉飾決算、横領など |
| 情報漏えい | 個人情報や機密情報の流出 |
| 労務違反 | 未払い残業代、偽装請負 |
パワハラなどの職場トラブルも、内部通報制度の対象に含まれます。日常業務のなかで違和感を覚えたら、早めに窓口へ相談してみてください。
内部通報の通報先
内部通報の通報先には、事業者内の窓口、処分や勧告の権限を持つ行政機関、報道機関などの外部機関があります。報道機関等への公益通報、いわゆる3号通報では、通報内容の真実相当性に加え、特別な事情の存在も要件です。
事業者内の窓口は利用しやすいですが、行政機関や外部機関への通報は要件が厳しくなる傾向にあります。通報先ごとの特徴を理解し、状況に応じて選んでみてください。
内部通報と内部告発の違い
内部通報と内部告発は、通報先によって使い分けられる言葉です。内部通報は社内窓口など所定のルートで不正を伝える行為を指し、内部告発は報道機関など社外へ知らせる行為として使われる場合が多くなっています。
両者は保護要件も異なるため、以下の表で確認してみてください。
| 項目 | 内部通報 | 内部告発 |
|---|---|---|
| 通報先 | 社内窓口 | 報道機関など社外 |
| 保護要件 | 比較的緩やか | 真実相当性など厳格 |
| 目的 | 社内での是正 | 社会への問題提起 |
通報先が変わるだけで保護要件も大きく変わるため、違いを押さえたうえで行動しましょう。
公益通報者保護法と消費者庁ガイドラインで求められる事業者の義務
公益通報者保護法と消費者庁ガイドラインでは、事業者に複数の義務が課されています。体制整備の対象範囲や従事者指定、独立性の確保など、押さえるべき義務を順に見ていきましょう。
従業員301人以上の事業者は体制整備が義務
常時使用する労働者が301人以上の事業者は、内部公益通報対応体制の整備が義務となります。従業員数300人を超える事業者には、内部通報に対応するための体制整備が義務となり、通報窓口の設置や調査体制の確保が求められます。
一方、300人以下の事業者は努力義務にとどまるものの、通報窓口や調査・是正措置の仕組みを備える対応が望ましいでしょう。ガイドラインに沿った体制づくりを進めてみてください。
従事者を指定し守秘義務を徹底する
公益通報対応業務を行う担当者は、従事者として指定したうえで、守秘義務を徹底する必要があります。2020年の改正では、常時使用する労働者数が301人超の事業者に対し、体制整備と従事者指定が義務化されました。同時に、守秘義務違反をした従事者に対する30万円以下の罰金規定なども新設されています。
氏名や所属、通報内容の取扱いを誤れば、通報者が特定され、制度への信頼が損なわれかねません。従事者指定と守秘義務の徹底は、内部通報制度を機能させる土台といえるでしょう。
通報対応体制の独立性・中立性・公正性を確保する
通報対応では、通報対象者や利害関係者が調査・判断に関与しない体制が欠かせません。担当者が対象者と近い立場にあると、調査結果が歪められる恐れがあり、通報者の信頼を得られなくなってしまいます。
そこで、担当部署を明確に分けたり、外部窓口を活用したりする方法が有効です。独立性と中立性、公正性を確保した体制こそ、通報者が安心して相談できる環境につながるでしょう。
通報者に対する不利益な取扱いを防止する
公益通報を理由に、解雇や降格、減給、配置転換、嫌がらせなどの不利益な取扱いをしてはいけません。不利益取扱いとは、公益通報を行ったことを理由として、事業者が通報者に不当な扱いをすることです。具体的には、解雇や懲戒のほか、降格、配置転換、減給、嫌がらせなども該当します。
経営層への周知や研修の徹底、通報後の人事異動チェックなど、社内対応を整えておく必要があります。通報者が安心して声を上げられる制度づくりを心がけることが大切です。
2026年12月1日施行の公益通報者保護法改正のポイント

2026年12月1日には、公益通報者保護法の改正法が施行されます。刑事罰の新設や解雇規制の強化、フリーランスの保護対象化など、企業に影響する改正ポイントを見ていきましょう。
従事者を指定しない場合の刑事罰が新設される
従事者を指定しないなど体制整備義務を果たさない場合は、消費者庁による指導や勧告、命令の対象となります。改正法では、従事者指定義務に違反し勧告に従わなかった場合は、消費者庁が命令を発することができるようになりました。
また、立入検査権限も新設され、命令違反や立入検査を拒否した場合には30万円以下の罰金が科されます。従事者指定を怠ると、罰則リスクに直結してしまう恐れがあります。
公益通報を理由とする解雇や懲戒への規制が強化される
改正後は、公益通報を理由とする解雇や懲戒への規制が強化されます。公益通報を理由とする解雇・懲戒には直罰規定が設けられ、通報後1年以内の解雇等は通報が理由と推定されます。
企業側は、通報者への処分理由を客観的な証拠とともに整理しておく必要があるでしょう。人事プロセスの記録管理を見直し、リスクに備えておきましょう。
フリーランスも保護対象に追加される
2026年12月1日施行の改正により、公益通報者の範囲にフリーランスが追加されます。現に事業者と業務委託関係にあるフリーランスだけでなく、業務委託関係が終了して1年以内のフリーランスも保護の対象となります。
発注事業者との取引で法令違反を知った場合も、通報者として保護されるようになるでしょう。企業は、従業員だけでなくフリーランスも含めた通報体制の整備を進める必要があります。
参考:公益通報ハンドブック 改正法(令和8年12月施行)準拠版 | 消費者庁
内部通報制度を導入する流れ
内部通報制度は、順を追って整備すると形骸化を防ぎやすくなります。目的の明確化から周知まで、導入の流れを5つのステップで見ていきましょう。
導入目的と対応範囲を明確にする
内部通報制度を導入する際は、不正の早期発見、通報者保護、法令違反の是正など目的を明確にする必要があります。目的が曖昧なままだと、担当者ごとに対応方針がばらつき、通報者の不信感につながりかねません。
さらに、ハラスメントや不正会計、情報漏えいなど、対応範囲をあらかじめ決めておくことも大切です。範囲を明確にすることで、通報を受けた際の判断もスムーズになるでしょう。
内部通報の責任者と担当部署を決める
内部通報制度では、通報受付から調査、是正までを管理する責任者と担当部署を決める必要があります。担当者を明確にしないまま運用すると、対応が後回しになり、通報者の不安を招いてしまいます。
そこで、通報対象者や利害関係者を調査から外し、独立性と中立性を保てる体制にすることが欠かせません。責任者と担当部署を早い段階で決めておきましょう。
通報窓口の設置場所を決める
通報窓口は、人事や法務、コンプライアンス部門などの社内窓口に加え、弁護士や外部専門機関に設ける方法もあります。社内窓口だけでは、担当者との人間関係を気にして通報をためらう従業員も出てくるでしょう。
外部窓口を併設すれば、匿名性や独立性が高まり、情報管理もしやすくなります。設置場所は、社内外のバランスを考えて選んでみてください。
社内規程や対応マニュアルを整備する
社内規程や対応マニュアルでは、通報受付、調査手順、是正措置、秘密保持、不利益取扱いの禁止を文書に定める必要があります。口頭のルールだけに頼っていると、担当者ごとに判断がぶれてしまい、対応の質が安定しません。
文書化しておけば、通報後に迷わず動ける運用体制が整います。マニュアルは一度作って終わりにせず、定期的な見直しも意識してください。
従業員へ周知し運用を開始する
内部通報制度は、窓口の場所や通報方法、秘密保持、不利益取扱いの禁止を従業員へ周知してから運用を開始する必要があります。整備しただけで周知を怠ると、制度の存在自体を知らない従業員が多くなり、形だけの仕組みで終わってしまうでしょう。
社内研修や掲示、イントラ掲載など、複数の手段を組み合わせて伝えることが効果的です。
通報を受けた後の対応フロー
通報を受けた後は、受付から是正措置、フォローアップまで段階を踏んだ対応が欠かせません。慎重な確認が求められる内容も含め、対応フローを順に見ていきましょう。
通報受付から調査までの流れ
通報を受けた後は、受付内容を記録し、通報対象事実や関係者、証拠の有無を確認します。記録が不十分だと、後の調査で事実関係が曖昧になってしまいます。そのうえで、利害関係者を外した担当者が調査方針を決め、必要なヒアリングや資料確認を進めていきましょう。
パワハラや不正の相談内容を慎重に確認する
パワハラや不正の相談では、通報者の主張だけで判断せず、日時や場所、関係者、証拠の有無を慎重に確認する必要があります。一方的な認定は、後の調査で事実と食い違うリスクを生んでしまいます。秘密保持を徹底し、周囲への漏えいによる二次被害を防ぐ配慮も欠かせません。
調査結果を踏まえて是正措置を行う
調査の結果、法令違反や不正が確認された場合は、被害拡大を防ぐために是正措置や再発防止策を講じる必要があります。放置すれば同じ問題が繰り返され、企業への打撃が大きくなってしまうでしょう。
関係者への処分に加え、業務フローの見直しや社内規程の改定まで踏み込んで対応してください。
通報者へのフォローアップを行う
通報者へのフォローアップでは、受付後の状況共有、調査結果の伝達可否、不利益取扱いの有無を確認する必要があります。連絡が途絶えると、通報者は不安を募らせ、制度への不信感を抱いてしまうでしょう。
秘密保持を前提にしながら、経過をこまめに伝える姿勢が信頼の維持につながります。
まとめ
内部通報制度は、不正の早期発見と通報者保護、法令違反の是正を実現するための重要な仕組みです。2026年12月1日には公益通報者保護法の改正法が施行され、フリーランスの保護対象化や罰則強化など、企業への影響も広がります。
体制整備を怠れば、消費者庁からの指導や命令の対象になりかねません。制度設計のお悩みは、ビズアップの人事コンサルにご相談ください。豊富な実績をもとに、貴社に合った内部通報制度の構築をサポートいたします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の状況については、官公庁の最新情報を参照のうえ、専門家にご相談ください。
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