産後パパ育休(出生時育児休業)とは?育児休業との違いを人事担当者向けに徹底解説

産後パパ育休(出生時育児休業)とは?育児休業との違いを人事担当者向けに徹底解説

2022年10月の育児・介護休業法改正により創設された「産後パパ育休(出生時育児休業)」。人事担当者の皆さんは、従来の育児休業との違いを正確に理解し、従業員からの問い合わせに的確に対応できていますか?

本記事では、産後パパ育休と育児休業の制度上の違い、申請手続きの実務、給付金の仕組みまで、人事担当者が押さえるべきポイントを徹底解説します。2025年4月に創設された出生後休業支援給付金についても最新情報をお届けします。

制度を正しく理解し、社内研修を徹底することで、従業員が安心して育児休業を取得できる環境を整えましょう。

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目次

産後パパ育休(出生時育児休業)とは

産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に最大28日間取得できる、男性の育児参加を促進するための新しい休業制度です。正式名称は「出生時育児休業」といい、従来の育児休業とは別に取得できる点が大きな特徴です。

制度創設の背景

日本における男性の育児休業取得率は長年低迷しており、2021年時点でわずか13.97%でした。特に出生直後の時期は、母親の産後ケアや上の子の世話など、父親の育児参加が強く求められます。しかし、従来の育児休業制度では柔軟性に欠け、男性が取得しにくいという課題がありました。

こうした状況を改善するため、出生直後の時期に特化した柔軟な休業制度として産後パパ育休が創設されました。

対象者の要件

産後パパ育休を取得できるのは、以下の要件を満たす従業員です。

基本要件:

  • 産後休業をしていない従業員(主に父親)
  • 子の出生日または出産予定日のいずれか遅い方から8週間以内の子と同居し、養育する者
  • 日雇従業員を除く

有期契約従業員の場合: 申出時点において、子の出生日または出産予定日のいずれか遅い方から8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでない者

労使協定により除外できる従業員:

  • 入社1年未満の従業員
  • 申出の日から8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

産後パパ育休と育児休業の違い

人事担当者として最も理解すべきは、産後パパ育休と育児休業の制度上の違いです。従業員からの問い合わせに正確に答えられるよう、主要な違いを整理しましょう。

主要な違いの比較表

項目産後パパ育休育児休業
対象期間子の出生後8週間以内原則子が1歳に達するまで
取得可能日数最大28日間制限なし(1歳まで)
申出期限原則2週間前まで原則1か月前まで
分割取得2回まで分割可能2回まで分割可能
休業中の就業労使協定により可能原則不可
給付率67%(出生後休業支援給付金13%を含めると80%)67%(180日まで)、その後50%

取得期間の違い

産後パパ育休: 子の出生日または出産予定日のいずれか遅い方から8週間以内の期間に、最大28日間を取得できます。この8週間という期間は、母親の産後休業期間(出生日の翌日から8週間)と重なるよう設計されています。

例えば、出産予定日が10月6日で、実際の出生日が10月5日だった場合、遅い方の10月6日から起算して8週間を経過する日の翌日(12月1日)までが取得可能期間となります。

育児休業: 原則として子が1歳に達する日の前日まで取得できます。保育所に入所できない等の理由がある場合は、1歳6か月、さらに2歳まで延長可能です。パパ・ママ育休プラス制度を利用すれば、1歳2か月に達する日の前日まで取得できます。

申出期限の違い

産後パパ育休: 原則として休業開始予定日の2週間前までに申出が必要です。ただし、労使協定で一定の雇用環境整備措置を講じた場合、申出期限を最長1か月前まで延長することができます。

育児休業: 原則として休業開始予定日の1か月前までに申出が必要です。産後パパ育休と比較すると、より早い段階での申出が求められます。

休業中の就業の違い

これが産後パパ育休の最大の特徴といえます。

産後パパ育休: 労使協定を締結している場合に限り、従業員が合意した範囲で休業中に就業することが可能です。ただし、就業可能日数には以下の上限があります。

  • 就業日数:休業期間の所定労働日数の半分以下
  • 就業時間:休業期間の所定労働時間の半分以下
  • 休業開始日・終了日に就業する場合:当該日の所定労働時間数に満たない時間

例えば、28日間の産後パパ育休を取得した場合、最大10日間(または80時間以内)の就業が可能です。14日間の休業であれば、最大5日間(または40時間以内)となります。

育児休業: 原則として休業中の就業は認められていません。一時的・臨時的な就業があった場合でも、支給単位期間中の就業日数が10日以下(10日を超える場合は80時間以下)である必要があります。

申請手続きの実務

人事担当者として、産後パパ育休の申請手続きを正確に理解し、従業員をサポートすることが重要です。

従業員からの申出受付

従業員から産後パパ育休の申出があった場合、以下の書類を提出してもらいます。

必要書類:

  • 出生時育児休業申出書
  • 母子健康手帳の写し等、育児の事実を確認できる書類

申出書の記載内容:

  • 休業に係る子の状況(氏名、生年月日、続柄等)
  • 休業期間(開始日と終了日)
  • 分割取得する場合は2回分をまとめて申出
  • 休業開始予定日の2週間前に申出ているか

申出を受け付けた後は、速やかに「出生時育児休業取扱通知書」を従業員に交付します。

分割取得の手続き

産後パパ育休は2回まで分割して取得できますが、2回に分割する場合は、初回の申出時に2回分をまとめて申し出る必要があります。まとめて申し出なかった場合、会社は後の申出を拒むことができます。

例えば、以下のような取得パターンが可能です。

  • 1回目:出生後すぐに7日間
  • 2回目:出生後3週目に7日間

申出の撤回

従業員は休業開始予定日の前日までであれば、申出を撤回できます。ただし、撤回した場合は撤回1回につき1回休業したものとみなされるため、注意が必要です。

撤回が2回ある、または1回の撤回と2回の休業がある場合は、同一の子について再度申出をすることはできません。

休業期間の変更

従業員は以下の変更を申し出ることができます。

休業開始予定日の繰り上げ: 休業開始予定日の1週間前までに申出することで、休業1回につき1回変更可能

休業終了予定日の繰り下げ: 休業終了予定日の2週間前までに申出することで、休業1回につき1回変更可能

休業中の就業に関する手続き

産後パパ育休の特徴である「休業中の就業」について、人事担当者が理解すべき手続きを解説します。

事前準備:労使協定の締結

休業中の就業を可能とするには、まず労使協定を締結する必要があります。協定では以下を定めます。

  • 休業中の就業を認める旨
  • 就業可能な業務の範囲
  • 就業日時等の提示・合意の方法

従業員からの申出

休業中に就業を希望する従業員は、「出生時育児休業中の就業可能日等申出書(社内様式6)」を休業開始予定日の1週間前までに提出します。

申出書の記載内容:

  • 就業可能な日時
  • テレワーク等の希望

会社からの就業日等の提示

会社は従業員の申出を受けて、申出の範囲内で就業日等を提示します(社内様式8)。就業日がない場合も、その旨を通知する必要があります。

従業員の同意

従業員は提示された就業日等について、「出生時育児休業中の就業日等の同意・不同意書(社内様式9)」を提出します。休業開始前日までに同意した場合に限り、休業中に就業することができます。

同意後の撤回

従業員は休業開始前日までであれば、同意した就業日等を撤回できます。休業開始後は、以下の特別な事由がある場合に限り撤回可能です。

  • 配偶者の死亡
  • 配偶者の負傷・疾病等により子を養育することが困難になった場合
  • 婚姻の解消等により配偶者が子と同居しなくなった場合
  • 子が負傷・疾病等により2週間以上の世話が必要になった場合

給付金制度の理解

産後パパ育休を取得した従業員には、雇用保険から給付金が支給されます。人事担当者は給付金の仕組みを理解し、従業員に正確な情報を提供する必要があります。

出生時育児休業給付金

支給要件:

  • 雇用保険の被保険者であること
  • 休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12か月以上あること
  • 休業期間中の就業日数が最大10日(10日を超える場合は80時間)以下であること

支給額: 休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数(28日が上限) × 67%

賃金との調整: 休業期間中に賃金が支払われた場合、以下のように調整されます。

賃金の額給付金の支給額
休業開始時賃金日額×休業期間の日数の13%以下減額なし(67%全額支給)
13%超~80%未満80%-賃金額
80%以上支給なし

出生後休業支援給付金(2025年4月創設)

2025年4月から、両親ともに育児休業を取得した場合に上乗せ支給される新しい給付金が創設されました。

支給要件:

  • 同一の子について、産後パパ育休または育児休業を14日以上取得していること
  • 配偶者も14日以上の育児休業を取得しているか、配偶者が育児休業を要件としない場合に該当すること

配偶者が育児休業を要件としない場合:

  1. 配偶者がいない
  2. 配偶者が子と法律上の親子関係がない
  3. 配偶者から暴力を受け別居中
  4. 配偶者が無業者
  5. 配偶者が自営業者やフリーランス
  6. 配偶者が産後休業中
  7. その他、配偶者が育児休業を取得できない理由がある場合

支給額: 休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数(28日が上限) × 13%

出生時育児休業給付金67%と合わせると、合計80%の給付率となり、社会保険料免除を考慮すると実質的に手取り10割相当になります。

※注意: 本人および配偶者ともに「14日以上」の取得が必須要件です。例えば、「産後パパ育休を5日間だけ取得」というケースでは、この上乗せ給付金(13%分)は支給されません(通常の67%のみとなります)。

給付金の上限額

休業開始時賃金日額の上限額は16,110円です(令和8年7月31日まで)。

出生時育児休業給付金の支給上限額(28日間): 16,110円 × 28日 × 67% = 302,223円

出生後休業支援給付金の支給上限額(28日間): 16,110円 × 28日 × 13% = 58,640円

合計: 360,863円

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支給申請手続きの実務

人事担当者は、給付金の支給申請手続きを代行することが一般的です。申請の流れを正確に理解しましょう。

提出書類

受給資格確認・支給申請時に必要な書類:

  1. 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
  2. 育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金/出生後休業支援給付金支給申請書
  3. 賃金台帳、出勤簿、タイムカード等
  4. 母子健康手帳の写し(出生届出済証明のページと分娩予定日が記載されたページ)

出生後休業支援給付金の追加書類: 配偶者の育児休業取得状況を確認できる書類、または配偶者が育児休業を要件としない場合に該当することを確認できる書類

申請期限

申請開始日から起算して2か月を経過する日の属する月の末日までに申請する必要があります。

申請開始日:

  • 原則:子の出生日(出産予定日前に出生した場合は出産予定日)から起算して8週間を経過する日の翌日
  • 28日に達した場合:達した日の翌日
  • 2回目の休業をした場合:2回目の休業を終了した日の翌日

支給決定

申請後、約1週間で被保険者本人の口座に給付金が振り込まれます。支給決定通知書は従業員に必ず交付してください。

育児休業との併用パターン

産後パパ育休は育児休業とは別に取得できるため、組み合わせることで柔軟な育児参加が可能になります。

よくある取得パターン

パターン1:産後パパ育休のみ取得

  • 出生直後に2週間の産後パパ育休を取得
  • その後職場復帰

パターン2:産後パパ育休 + 育児休業

  • 出生直後に2週間の産後パパ育休を取得
  • その後職場復帰
  • 母親の職場復帰に合わせて育児休業を取得(例:生後6か月から)

パターン3:分割産後パパ育休 + 育児休業

  • 出生直後に1週間の産後パパ育休を取得
  • 産後4週目に1週間の産後パパ育休を取得
  • その後、育児休業を取得

パパ・ママ育休プラス制度

両親ともに育児休業を取得する場合、子が1歳2か月に達する日の前日まで(最大1年間)育児休業給付金が支給されます。

要件:

  • 育児休業開始日が子の1歳に達する日の翌日以前であること
  • 育児休業開始日が配偶者の育児休業期間の初日以後であること
  • 配偶者が子の1歳に達する日以前に育児休業を取得していること

社内研修の重要性

産後パパ育休制度を効果的に運用するには、従業員全体への周知と理解促進が不可欠です。人事担当者は、社内研修を計画的に実施することが求められます。

研修で扱うべき内容

管理職向け研修:

  • 産後パパ育休制度の概要と意義
  • 部下からの申出への対応方法
  • 業務の引継ぎと代替要員の確保
  • ハラスメント防止(パタニティハラスメント)
  • 休業取得者の評価における注意点

一般従業員向け研修:

  • 産後パパ育休と育児休業の違い
  • 申請手続きの流れ
  • 給付金制度の概要
  • 休業中のキャリア形成
  • 職場復帰に向けた準備

研修実施のポイント

定期的な実施: 年1回以上、全従業員を対象とした研修を実施することが望ましいとされています。労使協定で申出期限を1か月前まで延長する場合は、研修実施が必須要件となります。

具体的な事例の共有: 自社での取得事例を共有することで、従業員が制度を身近に感じられるようになります。取得者の体験談や、業務カバーの工夫などを紹介しましょう。

管理職の意識改革: 管理職が制度を理解し、部下の取得を積極的に支援する姿勢を持つことが重要です。「取得しづらい雰囲気」を作らないよう、トップダウンでのメッセージ発信も効果的です。

相談窓口の設置

各事業所の人事担当部署に育児休業に関する相談窓口を設置し、従業員に周知することで、疑問や不安を早期に解消できます。相談窓口では以下の対応を行います。

  • 制度に関する説明
  • 申請手続きのサポート
  • 給付金試算
  • キャリア相談
  • 職場復帰支援

実務上の注意点

人事担当者が押さえておくべき実務上の注意点をまとめます。

労使協定の整備

産後パパ育休の対象者を限定したり、休業中の就業を可能にしたりするには、労使協定の締結が必要です。協定は労働基準監督署への届出は不要ですが、社内で適切に保管し、従業員が閲覧できるようにしておきましょう。

社会保険料の免除

産後パパ育休期間中は、健康保険・厚生年金保険料が免除されます。免除を受けるには、日本年金機構への届出が必要です。

免除の要件:

  • 月額保険料: 休業期間に月末を含む場合、または同一月内で14日以上休業した場合に免除されます。
  • 賞与保険料: 連続して1か月を超える休業を取得した場合に限り免除されます。

※注意:産後パパ育休は最大28日間のため、単独取得では賞与保険料の免除対象にはなりません。賞与支給月に取得する場合は説明時に注意が必要です。

賃金の取扱い

休業期間中の賃金支払いは会社の任意ですが、支払う場合は給付金との調整に注意が必要です。休業開始時賃金日額×休業期間の日数の13%以下であれば、給付金は減額されません。

不利益取扱いの禁止

産後パパ育休の申出・取得を理由とした解雇、降格、減給等の不利益な取扱いは法律で禁止されています。人事評価においても、休業取得を理由とした不利益な評価は行わないよう注意してください。

よくある質問と回答

Q1: 産後パパ育休は母親も取得できますか?

A: いいえ、産後パパ育休は産後休業をしていない従業員が対象です。母親は産後休業(出生日の翌日から8週間)を取得するため、産後パパ育休の対象にはなりません。母親は産後休業終了後に育児休業を取得できます。

Q2: 28日間を超えて休業したい場合はどうすればよいですか?

A: 産後パパ育休の上限は28日間ですが、それを超えて休業したい場合は育児休業を取得できます。その場合、28日を超えた部分について、育児休業として申し出る必要があります。

Q3: 休業中に数日間だけ出勤することは可能ですか?

A: はい、労使協定を締結している場合に限り可能です。ただし、就業日数は休業期間の所定労働日数の半分以下、就業時間は所定労働時間の半分以下という上限があります。

Q4: 給付金の申請を忘れた場合、どうなりますか?

A: 申請期限(申請開始日から2か月を経過する日の属する月の末日)を過ぎると、給付金を受給できなくなる可能性があります。期限内に必ず申請するよう、従業員に注意喚起してください。

Q5: 有期契約従業員も産後パパ育休を取得できますか?

A: はい、一定の要件を満たせば取得できます。申出時点で、子の出生日または出産予定日のいずれか遅い方から8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでない場合に取得可能です。

まとめ

産後パパ育休(出生時育児休業)は、男性の育児参加を促進し、ワークライフバランスを実現するための重要な制度です。人事担当者として押さえるべきポイントを整理しましょう。

制度の特徴:

  • 子の出生後8週間以内に最大28日間取得可能
  • 2回まで分割取得できる
  • 労使協定により休業中の就業が可能
  • 育児休業とは別に取得できる

給付金制度:

  • 出生時育児休業給付金:休業開始時賃金日額の67%
  • 出生後休業支援給付金:休業開始時賃金日額の13%(2025年4月創設)
  • 合計80%の給付率で、実質手取り10割相当

人事担当者の役割:

  • 正確な制度理解と従業員への情報提供
  • スムーズな申請手続きのサポート
  • 取得しやすい職場環境の整備
  • 社内研修の実施による制度の周知徹底

産後パパ育休制度を効果的に運用するには、社内研修を徹底し、全従業員が制度を正しく理解することが重要です。管理職の意識改革を進め、「取得して当たり前」の文化を醸成することで、男性の育児休業取得率向上につながります。

人事担当者の皆さんは、制度の詳細を理解し、従業員が安心して育児休業を取得できるよう、積極的にサポートしていきましょう。今回の記事が、実務の参考になれば幸いです。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の状況については、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。