退職金は何年目からもらえる?税金事情と合わせて紹介
「退職金」は将来のキャリアプランや資産形成を考える上で、非常に重要です。
しかし、自分の会社にどのような退職金制度があり、いつ、いくらもらえるのかを明確に把握している方は少ないのではないでしょうか。
本記事では、退職金を受け取るための条件や金額の確認方法、そして労働基準法などの法律で定められたルールについて、若手社員の方にもわかりやすく解説します。
目次

そもそも退職金とは

退職金とは、長年勤務したことに対する報奨や、退職後の生活保障、あるいは「給与の後払い」的な性格を持つ金銭です。多くの企業が導入している制度ですが、実は全ての会社に共通する一律のルールがあるわけではありません。
ただし、一度会社が「退職金を支払う」という制度を設けた場合は、労働基準法に基づき、その内容を就業規則(※1)に明記しなければならないという厳格なルールが発生します。
※1 就業規則とは…労働時間や賃金、退職といった労働条件や職場の規律をまとめたルール。常時10人以上の労働者を使用する事業主には作成と届出が義務付けられており、労働者と使用者の双方がこれを遵守し、誠実に義務を履行しなければならないと定められています。
退職金に税金はかかる?
退職金には所得税や住民税がかかりますが、長年の勤労に対する報奨的な性格を持つため、通常の給与よりも税負担が大幅に軽くなるよう設計されています。退職金の税金が安くなる最大の理由は、他の所得と分けて計算する「分離課税」が適用され、さらに大きな「退職所得控除」を差し引くことができるためです。この控除額は勤続年数に応じて増えていく仕組みになっています。
- 勤続年数が20年以下の場合:40万円 × 勤続年数
- 勤続年数が20年を超える場合:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年)
例えば、勤続3年で退職した場合、40万円×3年=120万円までは税金がかからない「非課税枠」となります。この計算において、勤続年数に1年未満の端数があるときは、たとえ1日であっても1年として切り上げて計算されるため、労働者にとって有利な仕組みになっています。また、算出された金額が80万円に満たない場合でも、最低80万円の控除が保障されます。
また、退職金は、支払を受ける際に所得税等や住民税が源泉徴収(または特別徴収)されます。勤務先に所定の手続き(「退職所得の受給に関する申告書」の提出など)をしておけば、会社側で正確な税額計算が完了するため、原則として自分で確定申告を行う必要はありません。なお、退職後には「退職所得の源泉徴収票」が交付されますので、大切に保管しておきましょう。
退職金は一括でもらえる?
退職金は、多くの企業で「退職一時金」として一括で受け取ることが可能です。これは退職時にまとまった現金が一度に支払われる最も一般的な形態ですが、企業によっては「退職年金」として分割で支払われるケースや、両者を組み合わせて選択できる場合もあります。
こうした具体的な支払方法や時期については、会社の就業規則に必ず明記することが法律で義務付けられています。退職金は企業が独自に定める「法定外福利厚生」であるため、一括受取ができるかどうかは各社の規定によって決まります。そのため、将来の設計に合わせて自社の規則を事前に確認しておくことが大切です。
退職金がもらえるのは何年目から?
「退職金は何年働けばもらえるのか」という問いへの答えは、「あなたの会社の就業規則にどう書かれているか」によって決まります。つまり、皆さんの会社の就業規則を確認すれば、「勤続何年以上から対象になるか」「いくらもらえるか」が必ず記載されているはずです。
ここでは、厚生労働省のモデル就業規則を例に退職金規定を確認してみましょう。
(退職金の額)
第55条
退職金の額は、退職又は解雇の時の基本給の額に、勤続年数に応じて定めた下表の支給率を乗じた金額とする。
勤続年数 支給率 5 年未満 1.0 5 年~10年 3.0 11 年~15年 5.0 16 年~20年 7.0 21 年~25年 10.0 26 年~30年 15.0 31 年~35年 17.0 36 年~40年 20.0 41 年~ 25.0 2 第9条により休職する期間については、会社の都合による場合を除き、前項の勤続年数に算入しない。
この規定例では、勤続年数が1年未満から受給資格が発生し、長く勤めるほど支給倍率が段階的に上がっていく仕組みが採用されています。基本給に連動して算出されるため、社内での昇給や長期勤続が将来の受取額に大きく影響することが見て取れます。また、休職期間が算定に含まれないケースなど、年数計算の細かなルールについても明確に定められています。
勤続5年未満の試算例(基本給25万円の場合)
基本給が25万円の場合、算出式(基本給 × 支給率)に当てはめると以下のようになります。
- 試算:25万円 × 1.0 = 25万円
この条件であれば、勤続年数が5年に満たない段階で退職しても、基本給1か月分に相当する退職金を受け取れることになります。
勤続年数ごとの支給額シミュレーション
表の支給率に従うと、長く勤めるほど倍率が大幅に上昇していくのがわかります。
- 勤続11年〜15年(支給率5.0):25万円 × 5.0 = 125万円
- 勤続26年〜30年(支給率15.0):25万円 × 15.0 = 375万円
- 勤続41年以上(支給率25.0):25万円 × 25.0 = 625万円
一方で中小企業向けの「中小企業退職金共済(中退共)」などを利用している場合、国からの助成金などの支援を受けて制度が運用されていることもあります。
退職金がもらえないケース

では、退職金がもらえないケースはどういう場合なのでしょうか。 そもそも退職金は、法律で義務付けられた「法定福利厚生」ではなく、企業が任意で導入する「法定外福利厚生」に分類されます,。そのため、勤務先の会社が最初から制度を設けていない場合や、就業規則に支給対象外となる条件が明記されている場合には、支払われない可能性があります,。
会社の定める勤続年数を満たない場合
退職金制度は、入社時に渡された「労働条件通知書」や、社内規定(就業規則)に必ず記載されています。 多くの企業では、長期勤続を奨励するために「勤続3年以上」や「5年以上」といった受給資格を設けており、この基準に1日でも足りない場合は支給対象外となります。自社の就業規則で「受給に必要な正確な年数」を事前に把握しておくことが、キャリア形成を考える上での重要なポイントです,。
請求期限を過ぎた場合
退職金は多額になることが多いため、税金の仕組みや請求できる権利の期限(時効)について知っておく必要があります。もし会社が倒産したり、支払いを渋ったりした場合でも、退職から5年を過ぎると法的に請求する権利が消滅してしまいます。 労働基準法第115条により、退職金の請求権は行使できるようになった時から5年間と定められています。通常の賃金の時効(当面の間は3年)よりも長く設定されていますが、期限を過ぎると一切の法的請求ができなくなるため注意が必要です。
自己都合の場合
自己都合で辞める場合、会社都合(倒産や定年など)よりも支給額が減額されるルールを設けている会社は少なくありません。 退職理由は支給額を左右する大きな要因であり、就業規則で自己都合退職時の「支給率の低減」が規定されていることが一般的です。また、重大な規律違反による懲戒解雇などの場合には、規定に基づき退職金の全部または一部が不支給とされるリスクも存在します。
まとめ
この記事では「退職金は何年目からもらえるのか」について説明しました。退職金がいつからもらえるのかに決まりはなく、それぞれの会社の就業規則によって規定されています。労働基準法によって、退職金制度がある場合はその内容を明文化することが義務付けられているからです。また、万が一、退職時にトラブルが発生した際や、制度の内容について詳しく知りたい場合は、お近くの労働基準監督署や総合労働相談コーナーなどの公的な窓口に相談することも可能です。
若手のうちから「自分はいつから、どのような形で退職金を受け取れるのか」を確認しておくことは、将来の自分を守るための第一歩です。会社の就業規則を、一度じっくり読み返してみてはいかがでしょうか。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の状況については、関連省庁の最新情報をご参照のうえ、専門家にご相談ください。
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