女性活躍推進法の一般事業主行動計画とは?策定から届出まで人事担当者が知るべき全手順【完全ガイド】

女性活躍推進法の一般事業主行動計画とは?策定から届出まで人事担当者が知るべき全手順【完全ガイド】

女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定は、従業員101人以上の企業に義務付けられている重要な法的責任です。しかし、「具体的に何をすればよいのか」「どのような計画を立てればよいのか」と悩まれる人事担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、一般事業主行動計画の基本的な理解から、策定の具体的な手順、届出方法、さらには効果的な計画を立てるためのポイントまで、人事担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。実際の企業事例や具体的な数値目標の設定方法もご紹介しますので、明日からすぐに実践できる内容となっています。

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目次

女性活躍推進法と一般事業主行動計画の基礎知識

女性活躍推進法とは何か

女性活躍推進法(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、2016年4月に施行された法律です。この法律は、女性が職業生活において十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備することを目的としています。

2022年7月の改正により、常時雇用する労働者数が101人以上の企業に対して、一般事業主行動計画の策定・届出が義務化されました。これは、単なる努力目標ではなく、法的な義務であることを理解しておく必要があります。

一般事業主行動計画が求められる背景

日本における女性の労働参加率は上昇傾向にありますが、管理職における女性比率や男女間の賃金格差など、依然として課題が残されています。一般事業主行動計画は、各企業が自社の状況を分析し、具体的な数値目標と取組内容を定めることで、実効性のある女性活躍推進を実現するための仕組みです。

企業にとっては、優秀な人材の確保や組織の多様性向上、企業イメージの向上といったメリットも期待できます。また、認定制度「えるぼし」や「プラチナえるぼし」を取得することで、公共調達における加点評価を受けられるなど、実務的な利点もあります。

対象となる事業主の範囲

一般事業主行動計画の策定・届出が義務となるのは、常時雇用する労働者数が101人以上の事業主です。ここでいう「常時雇用する労働者」には、正社員だけでなく、パートタイム労働者や契約社員なども含まれます。

労働者数が100人以下の企業については努力義務となっていますが、自主的に策定・届出を行うことで、企業の姿勢をアピールすることが可能です。

一般事業主行動計画策定の4つのステップ

一般事業主行動計画の策定は、以下の4つのステップで進めていきます。

ステップ1:自社の女性活躍に関する状況把握

まず、自社における女性活躍の現状を客観的に分析することから始めます。女性活躍推進法では、以下の基礎項目について必ず把握することが求められています。

必須の把握項目

区分必須の把握項目(基礎項目)
採用男女別の採用における競争倍率(採用者数÷応募者数)
継続就業男女別の配置の状況、男女別の将来の人材育成を目的とした教育訓練の受講の状況
労働時間男女別の1つ上位の職階へ昇進した者の割合
登用男女別の職種または雇用形態の転換の実績
賃金男女別の再雇用または中途採用の実績

これらのデータを収集・分析することで、自社の強みと課題が明確になります。人事システムから抽出できるデータもあれば、新たに調査が必要な項目もあるでしょう。

ステップ2:課題分析と計画期間の設定

状況把握で得られたデータをもとに、自社における女性活躍推進の課題を特定します。例えば、「採用段階での女性比率は高いが、管理職になると極端に少ない」「育児休業取得後の復職率は高いが、時短勤務が長期化している」といった具体的な課題が見えてくるはずです。

計画期間については、2年以上10年以内で設定することが求められています。多くの企業では、3年から5年の計画期間を設定しています。事業計画や中期経営計画との整合性を考慮して決定すると良いでしょう。

ステップ3:数値目標と取組内容の決定

課題分析に基づき、少なくとも1つ以上の数値目標を設定します。数値目標は、測定可能で達成可能な具体的なものにすることが重要です。

数値目標の設定例

課題領域数値目標の例
採用新卒採用における女性比率を40%以上にする
管理職登用管理職に占める女性比率を15%以上にする
継続就業育児休業取得率を男性30%、女性100%にする
労働時間月平均残業時間を20時間以内にする
キャリア形成女性リーダー育成研修の受講者数を年間50名以上にする

数値目標を達成するための具体的な取組内容も明記します。「女性管理職比率15%」という目標であれば、「女性リーダー候補者向けキャリア研修の実施(年4回)」「メンター制度の導入」「管理職候補者の計画的育成」といった具体策を盛り込みます。

ステップ4:社内周知と外部公表

策定した行動計画は、労働者への周知と外部への公表が義務付けられています。

社内周知の方法としては、社内イントラネットへの掲載、書面の配布、社内説明会の実施などがあります。全ての労働者が内容を理解できるよう、複数の方法を組み合わせることが効果的です。

外部公表については、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」への登録が一般的です。自社のウェブサイトに掲載することも推奨されています。

一般事業主行動計画の届出方法

届出先と提出期限

一般事業主行動計画は、策定後、遅滞なく管轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に届け出る必要があります。「遅滞なく」とは、通常、策定後おおむね1か月以内を指します。

計画期間が終了し、新たな計画を策定する場合も、同様に届出が必要です。また、計画期間中に内容を変更した場合も、変更届を提出します。

届出に必要な書類

届出には、「一般事業主行動計画策定・変更届」という様式を使用します。この様式には以下の内容を記載します。

  • 事業主の名称、所在地、代表者氏名
  • 常時雇用する労働者数
  • 計画期間
  • 数値目標
  • 取組内容
  • 目標達成に向けたスケジュール

届出は、紙媒体での郵送・持参のほか、電子申請も可能です。電子申請の場合は、e-Gov電子申請 または 厚生労働省電子申請・届出システムを通じて手続きができます。

届出後の管理と更新

届出後は、計画の進捗状況を定期的に確認し、PDCAサイクルを回していくことが重要です。年度ごとに実績を測定し、目標達成に向けた取組が適切に機能しているかを評価します。

計画期間が満了する前に、次期計画の策定準備を始めましょう。現行計画の評価結果を踏まえ、新たな課題や目標を設定していきます。

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効果的な行動計画策定のポイント

実態に即した目標設定

数値目標を設定する際は、自社の実態を踏まえた現実的な目標にすることが大切です。過度に高い目標は達成困難であり、逆に低すぎる目標では実効性がありません。

過去3年程度のデータを分析し、自然増加分を考慮したうえで、努力によって達成可能な目標を設定しましょう。業界平均や同規模企業の数値も参考になります。

経営層のコミットメント

女性活躍推進を実効性のあるものにするためには、経営トップの強いコミットメントが不可欠です。行動計画の策定段階から経営層を巻き込み、全社的な取組として位置づけることが成功の鍵となります。

経営会議での定期的な進捗報告や、トップメッセージの発信などを通じて、組織全体に女性活躍推進の重要性を浸透させていきましょう。

現場の声を反映した取組内容

実際に働く女性社員の声を丁寧に聞き取り、現場のニーズに合った取組を盛り込むことが重要です。アンケート調査やヒアリング、座談会などを実施し、キャリア形成における障壁や職場環境の課題を把握しましょう。

特に、育児や介護との両立、キャリアアップへの不安、ロールモデルの不在といった課題は、多くの企業で共通して挙げられるテーマです。

企業内研修の重要性

女性活躍推進を真に実現するためには、組織全体の意識改革が欠かせません。そのために最も効果的な手段が、体系的な企業内研修の実施です。

効果的な研修プログラムの例

対象層研修テーマ期待される効果
経営層・管理職アンコンシャスバイアス研修、ダイバーシティマネジメント女性登用への理解促進、公平な評価の実現
女性社員キャリアデザイン研修、リーダーシップ開発キャリア意識の向上、管理職志向の醸成
全社員ワークライフバランス研修、男性育休推進働き方改革の浸透、性別役割分担意識の解消

特に管理職向けの研修では、無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)への気づきを促し、女性部下の育成方法やキャリア支援のスキルを習得させることが重要です。また、女性社員向けには、ロールモデルとの対話機会を設けたり、外部のキャリアコンサルタントによる個別面談を実施したりすることで、具体的なキャリアビジョンの形成を支援できます。

研修は単発で終わらせず、年間を通じた継続的なプログラムとして設計することで、組織文化の変革につながります。研修後のフォローアップや効果測定も行い、PDCAサイクルを回すことで、より実効性の高い人材育成が実現します。企業内研修を徹底することで、女性活躍推進における様々な課題の解決に至ることができるのです。

実際の企業事例に学ぶ

製造業A社の事例:女性管理職比率向上

従業員500名の製造業A社では、女性社員の割合は30%あるものの、管理職における女性比率がわずか5%という課題を抱えていました。

同社は、「5年後に女性管理職比率を15%にする」という数値目標を設定し、以下の取組を実施しました。

  • 女性リーダー候補者の選抜と計画的育成(年間20名)
  • 外部講師による女性リーダーシップ研修(年4回)
  • 女性社員と役員との対話会の実施(四半期ごと)
  • 管理職向けダイバーシティマネジメント研修の義務化
  • 育児休業からの復職者向けキャリア面談の実施

これらの取組により、3年目には女性管理職比率が12%まで上昇し、目標達成に向けて順調に進んでいます。

サービス業B社の事例:男性育休取得率向上

従業員300名のサービス業B社は、女性の育児休業取得率は100%であるものの、男性の取得率が5%未満という状況でした。

同社は、「男性育児休業取得率50%」を目標に掲げ、以下の施策を展開しました。

  • 妊娠・出産の届出時における個別面談の義務化(男女とも)
  • 男性育休取得者の体験談共有会の実施
  • 育休取得促進に関する管理職評価項目の追加
  • 育休取得前・復帰前の上司面談の実施
  • 短期間からの取得を可能とする柔軟な制度設計

2年目には男性育休取得率が35%に達し、職場の雰囲気も大きく変化しました。

よくある質問と回答

Q1:計画期間中に目標が達成できなかった場合、罰則はありますか?

A:目標未達成自体に対する直接的な罰則はありません。ただし、行動計画の策定・届出を怠った場合や、虚偽の報告をした場合には、企業名の公表などの措置が取られる可能性があります。目標達成に向けて誠実に取り組むことが重要です。

Q2:複数の事業所がある場合、事業所ごとに計画を策定する必要がありますか?

A:基本的には企業全体で1つの計画を策定します。ただし、事業所ごとに状況が大きく異なる場合は、事業所別に計画を策定することも可能です。

Q3:計画期間の途中で数値目標を変更できますか?

A:計画期間中でも、必要に応じて目標や取組内容を見直すことができます。ただし、変更した場合は変更届を提出する必要があります。

まとめ

女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画は、単なる法令対応ではなく、企業の持続的成長と優秀な人材確保のための戦略的ツールです。本記事でご紹介した策定の4つのステップ——状況把握、課題分析、目標設定、周知・公表——を着実に進めることで、実効性のある計画を立てることができます。

特に重要なのは、自社の実態に即した現実的な数値目標を設定すること、経営層のコミットメントを得ること、そして体系的な企業内研修を通じて組織全体の意識改革を図ることです。女性活躍推進は一朝一夕には実現しませんが、継続的な取組により、必ず成果につながります。

まずは自社の現状データを収集することから始めてみてください。厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」では、他社の行動計画も参照できますので、ぜひ参考にしてください。不明な点があれば、最寄りの都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談することも可能です。

今日から、あなたの会社での女性活躍推進の第一歩を踏み出しましょう。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の状況については、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。