労働基準法改正はどうなった?2026年に見送られた改正案と今後の見通し

労働基準法改正はどうなった?2026年に見送られた改正案と今後の見通し

近年、労働基準法については、政府の諮問機関である労働政策審議会において、大規模な見直しに向けた検討が進められてきました。

その内容は、実現すれば約40年ぶりともいわれる抜本的な改正となるもので、就業規則の見直しをはじめ、勤怠管理や給与計算など、企業の労務管理実務に広く影響を及ぼすことが想定されていました。こうした労働基準法の大改正は、2026年の通常国会への法案提出が目指されてきましたが、2025年11月、新政権下で「労働時間規制の緩和」が打ち出されたことを背景に、いったん見送りとなっています。

もっとも、改正が見送られたからといって、これまで議論されてきた論点が無意味になったわけではありません。人事・労務担当者にとっては、今後の制度改正を見据えるうえで、当初想定されていた改正の方向性を把握しておくことが重要です。本記事では、2026年改正として検討されていた主なポイントをあらためて振り返りつつ、現在の状況と今後の見通しについて解説します。

目次

40年ぶりの労働基準法の大改正のポイント

2025年1月21日、労働政策審議会において、労働基準法改正の議論の柱となる「労働基準関係法制研究会報告書」が示されました。

この報告書は、今後の労働基準法制の方向性を示すものとして位置づけられており、実現すれば約40年ぶりとなる抜本的な見直しにつながる可能性がある内容でした。

当初の予定では、本報告書を踏まえてさらに議論を重ね、年内に論点のとりまとめを行ったうえで、2026年の通常国会に改正法案を提出することが目指されていました。報告書では、法改正そのものに加え、新たなガイドラインの整備も含め、企業の労務管理実務に大きな影響を与える論点が幅広く整理されています。

具体的には、次のような項目について、見直しや制度整備が検討されていました。

  • 法定休日の特定
  • 連続勤務の規制
  • 勤務間インターバル
  • つながらない権利
  • 年次有給休暇の賃金の算定方法
  • 副業・兼業の場合の割増賃金
  • 過半数代表の選出手続きの見直し
  • 企業による労働時間の情報開示
  • フレックスタイム制の改善
  • テレワーク時のみなし労働時間制
  • 週44時間の特例措置の撤廃
  • 管理監督者等の見直し

以下では、これらの項目について、一つずつ解説していきます。

参考:第193回労働政策審議会労働条件分科会(資料)| 厚生労働省

法定休日の特定

法定休日をあらかじめ明確に定めることを求める改正です。

現行法では週1回の休日付与が義務づけられていますが、週休2日制の普及により、法定休日と所定休日の区別が不明確なケースも見られます。この点を是正し、あらかじめ法定休日を特定することを法改正で対応すべきとする内容です。

連続勤務の規制

休日の付与方法を見直し、過度な連続勤務を防ぐための改正です。

現行の「4週4休」制度では、制度上48日連続勤務が可能となる場合があります。これを是正するため、「2週2休」とする案や、「14日以上の連続勤務を禁止」とする案など、連続勤務の上限日数を抑制する規定を設けることが検討されていました。

勤務間インターバル

勤務と勤務の間に一定時間の休息を確保する制度を義務化する改正です。

現在は努力義務とされている勤務間インターバルについて、原則11時間程度の確保を義務化する方向で検討が進められていました。あわせて、導入が難しい場合の代替措置を設けることも論点とされています。

つながらない権利

勤務時間外の連絡ルールを労使間で定めるためのガイドラインの整備です。

時間外や休日における業務連絡が常態化すると、労働時間と私生活の区別が曖昧になります。こうした状況を踏まえ、勤務時間外に許容される連絡の範囲などを労使で検討するための指針を示す内容です。

年次有給休暇の賃金の算定方法

年次有給休暇中の賃金の算定方法を見直す改正です。

現行では平均賃金など複数の算定方法が認められていますが、結果として賃金が大きく減額されるケースもあります。これを踏まえ、「所定労働時間労働をした場合に支払われる通常の賃金」を原則とする方向での見直しが検討されていました。

副業・兼業の場合の割増賃金

副業・兼業時の割増賃金の計算を見直す改正です。現行制度では、副業や兼業の場合、労働契約の締結順で労働時間を通算するなどし、割増賃金を支払うしくみとなっていますが、企業にとっては実務が複雑で、副業促進の妨げとなっているとの指摘もあります。

こうした課題を踏まえ、労働者の健康確保のための労働時間の通算は維持しつつ、割増賃金のための通算はしない法整備が検討されました。

過半数代表の選出手続きの見直し

36協定などを締結する労働者の過半数代表の選出手続きを定めるものです。現行法では、「過半数代表」や「過半数代表者」の定義が明確でなく、そのため企業によってはあいまいな形で選ばれたり、知識をもたず役割を適切に果たせない人選であったりする場合があります。

定義と選出手続きを整備し、労使間のコミュニケーションを見直すことを目的としています。

企業による労働時間の情報開示

労働時間に関する情報開示を促進する改正です。

時間外・休日労働の状況などについて、企業の内外に情報を開示・共有することが検討されていました。求職者にとっての判断材料とするとともに、企業間の健全な競争を促すねらいがあります。あわせて、企業内においても、勤務環境の改善につなげる効果が期待されています。

フレックスタイム制の改善

多様な働き方に対応するための、フレックスタイムの改善です。現行制度では部分的な適用が難しく、テレワークと出社が混在すると活用しづらい面があります。

そのため、「特定の日のみ時間通り出退勤させて残りはフレックス制」のような改善案が検討されていました。

テレワーク時のみなし労働時間制

テレワークにおける労働時間管理の選択肢を広げる改正です。

在宅勤務では労働時間の把握が難しく、一方で、過度な管理はプライバシーの問題も懸念されます。そこで労働者が選択できる形で、みなし労働時間制を適用できるしくみの導入が検討されていました。

週44時間の特例措置の撤廃

法定労働時間を週44時間とする特例措置を撤廃する内容です。対象となる企業の87.2%でこの労働時間の特例がすでに利用されておらず、制度としての役割をおおむね終えたと判断されました。

管理監督者等の見直し

健康管理については、現行法では労働安全衛生法に基づく長時間労働者への医師による面接指導の対象とはなるものの、労働基準法上の措置は設けられていません。この点について、労働基準法上の対応を含めた見直しが検討されていました。

あわせて、管理監督者等に該当しない労働者が管理監督者として扱われているケースに対処するため、要件を明確化すべきとの指摘もなされています。

労働基準法改正の2026年以降の見通し

前述のとおり、約40年ぶりとされる労働基準法の大改正は、当初、2026年の通常国会への改正法案提出が予定されていました。

しかし、新政権下において2025年11月に発足した日本成長戦略会議において、労働時間規制の緩和が新たな検討課題とされたことから、改正法案の提出はいったん見送られることとなりました。

もっとも、過労死等への懸念を背景に、労働時間規制の緩和に対しては、日本成長戦略会議の内部でも慎重な意見が示されています。

第2回会合後の2025年12月24日の記者会見では、労働時間規制の緩和に関して、必要に応じ追加調査を実施するなどしながら、関係機関と連携し、運用面と制度面の双方から検討を加速させる旨の話もありました。日本成長戦略の取りまとめは、2026年夏を目途とするとされています。政府としての方向性が固まれば、労働政策審議会において審議が行われ、意見の集約を経て、改正法案の提出へと進むことが想定されます。

今回の労働基準法改正については、いったん仕切り直しとして受け止め、当面は日本成長戦略会議における議論の行方を注視していく必要があるでしょう。

参考:城内内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年12月24日 | 内閣府

まとめ

本記事では、2026年の改正が検討されていた労働基準法の主な論点を振り返りながら、現在の状況と今後の見通しを解説しました。

改正は見送られましたが、検討の過程で示されたこれらの論点は、今後の制度改正や自社の労務管理の方向性を考えるうえで参考となるものです。とりわけ2026年は、政府の方針を注視しながら法改正に備えることが求められます。

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※本記事の内容は2026年1月時点での情報です。最新の情報については、内閣府・厚生労働省のホームページをご確認ください。