内定・内々定の違いとは?人事・労務担当者が押さえておくべき基礎知識と取消し・辞退の考え方

内定・内々定の違いとは?人事・労務担当者が押さえておくべき基礎知識と取消し・辞退の考え方

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採用実務において「内定」と「内々定」は頻繁に使われる言葉ですが、法的な位置づけや実務上のリスクを正確に理解できていないと、トラブルにつながる可能性があります。

特に近年は、早期選考の常態化、学生側の複線応募、SNSでの情報拡散などにより、内定取消しや内定辞退を巡る問題が顕著化しやすくなり、これらの問題が企業のイメージ低下に直結してしまうことも少なくありません。

本記事では、内定と内々定のそれぞれの法的性質や内定取消し・辞退の考え方、実務トラブルを防ぐための実務上のポイントなどをわかりやすく解説していきます。採用実務を行っている人事・労務担当の方だけでなく、就職活動をされている方も、ぜひ本記事をご参考ください。

目次

内定とは

まずは、内定と内々定について、その法的定義やそれぞれの違いについて解説していきます。内定とは、企業が採用候補者に対して「将来、雇用契約を締結する意思がある」ことを正式に通知し、始期付・解約権留保付労働契約が成立した状態を指します。

実務では、

  • 内定通知書の交付
  • 内定承諾書の回収
  • 入社日・処遇条件の明示

などが行われ、法律上は『労働契約が成立している』と解釈されるのが通説です。

内定=労働契約成立とされる理由

法律上、内定は「始期付・解約権留保付の労働契約」と定義されています。つまり、入社日が始期である、一定の条件(卒業・健康状態など)で解約できるという前提付きではあるものの、契約関係そのものは成立しているとされます。

内定取消しが制限される理由

労働契約法第16条では、解雇について『客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない場合は無効』と定められています。内定取消しもこれに準じて判断されるため、企業の裁量は大きく制限されます。

内々定とは

内々定は、企業が候補者に対して「採用の方向性で考えているが、正式な内定ではない」ことを示す、慣行上の表現です。

多くの場合、以下のような背景でこの表現が使われます。

  • 学校推薦や就職協定への配慮
  • 採用スケジュール上、正式内定を出せない時期
  • 社内決裁が未完了

原則として法的に契約は成立しておらず、明確な定義は存在していません。

内定と内々定の違い

項目内定内々定
法的性質労働契約が成立原則として契約未成立
法律上の定義判例・通説あり明確な定義なし
取消しの可否客観的合理性+社会通念上の相当性が必要比較的自由だが注意
通知方法書面が一般的口頭・メールが多い
トラブルリスク高い表現次第で高くなる

重要ポイントは、内々定は、法律上明確な定義がある言葉ではないということです。そのため、通知の仕方や内容次第では「内定」と同視されるリスクがあります。

内定・内々定取消しの考え方

次に、内定・内々定を採用側が取消す際の考え方について解説します。

内定取消しが認められるケース

以下のような場合は、比較的認められやすいとされています。

  • 内定者が卒業できなかった
  • 内定者の経歴詐称が判明した
  • 内定者の健康状態が著しく悪化し、業務に重大な支障をきたすことが判明した
  • 企業の経営が存続危機レベルに悪化した

このような、かなり“重い”理由がない限り、内定の取消しは認められません。

内定取消しが認められにくいケース

以下のような場合は企業側の都合と判断され、無効となる可能性が高いです。

  • 採用計画の変更
  • 業績予測の悪化
  • 「思っていた人物像と違った」

内定は労働契約が成立している前提であるため、「解雇」と同水準の理由がない限り取消しは認められません。

内定取消しにおける注意点

内定取消しは、内定が労働契約の成立と評価されるため、解雇と同程度の厳格な判断が求められます。卒業不可や重大な経歴詐称など、客観的かつ合理的な理由がなければ無効とされる可能性が高く、企業都合による取消しは原則認められません。

採用業務においては、担当者は事前に条件を明示しておくことや、事実確認を徹底すること、また誠実な説明対応をすることが必要不可欠です。

内々定取消しが認められるケース

以下のような場合は、比較的認められやすいとされています。

  • 内々定後、新たに不適格な事情が判明した
  • 応募書類・面接内容との重大な齟齬があった
  • 採用判断に影響する事実が判明した

法的拘束力が弱いため、内定取消しと比べて、採用側の裁量が認められやすいとされています。

内々定取消しが認められないケース

以下のような場合は企業側の都合と判断され、無効となる可能性が高いです。

  • 取消理由が内々定者本人の事情ではなく、企業側の採用計画上の都合に過ぎないこと
  • 内々定時に「採用を前提としている」と受け取れる説明を行っていた場合、内々定者に入社への合理的期待(期待権)を生じさせている可能性があること
  • 取消対象者の選定基準が不明確であると、恣意的・不公平な取扱いと評価されやすいこと

内々定取消しにおける注意点

内々定は法律上明確な定義がなく、形式的には企業側の裁量が比較的認められやすい段階ではあります。しかし、内々定後に

  • 他社選考の辞退を促していた
  • 入社時期や配属、処遇に関する具体的な説明を行っていた
  • 長期間にわたり内々定状態を継続させていた

といった事情がある場合には、内々定であっても内定と同視され、信義則違反や期待権侵害として損害賠償責任を問われるリスクがあります。

実務では、辞退率を見込んだ人数調整を行う場合でも、

  • 内々定段階では「正式内定ではない」ことを明確に伝える
  • 内々定取消しを前提とした運用は避ける(辞退を見越して多めに内々定を出すなど)
  • 最終的に採用枠を超えた場合は、入社時期の調整や追加配置、本人の同意を前提とした条件変更を検討する

といった慎重な対応が求められます。

内定・内々定辞退の考え方

最後に、内定者や内々定が辞退を表明した場合の可否や対応について解説していきます。

内定・内々定辞退の可否

まず、内定辞退の可否については、

  • 内定は労働契約が成立していると評価されるが、労働者には退職の自由がある
  • そのため、入社前であっても内定辞退は原則として可能

と理解しておく必要があります。

また、内々定辞退は契約関係が成立していない段階であるため、より自由に行えるものとされています。

採用側の実務対応のポイント

次に、採用側の実務対応のポイントとしては、

  • 辞退の連絡を受けた際に、感情的な引き止めや責任追及をしない
  • 辞退の意思をメール等で確認し、記録として残す
  • 辞退理由は今後の採用改善に活かしつつ、本人に不利益な取扱いをしない

といった対応が重要です。これらを徹底することで、法的トラブルや企業イメージの低下を防ぐことができます。

内定・内々定をめぐるトラブル例

内定・内々定をめぐっては、企業側の認識不足や運用の曖昧さからトラブルに発展するケースが少なくありません。ここでは、実務上おきがちなトラブルを具体例とともに3つご紹介します。

内々定のつもりが「内定」と評価されたケース

新卒採用担当のAさんは、最終面接を通過した学生Bさんに対し、「内々定です。入社前提で準備を進めてください」とメールで伝えました。あわせて入社予定日や配属部署にも触れていましたが、その後、採用計画の変更を理由に内々定を取り消しました。Bさんはすでに他社選考を辞退しており、「実質的な内定を取り消された」と主張。結果として、内々定が内定と同視され、企業側の説明不足が問題となりました。

辞退見込みが外れ、任意に内々定を取り消したケース

人事担当Cさんは、例年の辞退率を見込んで定員より多くの学生に内々定を出しました。しかし想定より辞退者が少なく、定員超過となったため、成績が平均的だったDさんの内々定を取り消すことにしました。Dさんは「理由が不明確で不公平だ」と不満を持ち、大学のキャリアセンターに相談。企業の採用姿勢が問題視され、翌年の採用活動にも影響が出ました。

内定辞退への感情的対応が波紋を広げたケース

内定者Eさんから辞退の連絡を受けた採用担当Fさんは、「無責任だ」「今さら辞退するのは非常識だ」と強い口調で引き止めました。Eさんは精神的負担を感じ、そのやり取りをSNSで共有。投稿が拡散され、企業名とともに対応の不適切さが批判される事態となり、企業イメージの低下を招きました。

これらの事例から分かるように、内定・内々定をめぐるトラブルは、表現・判断基準・対応姿勢のわずかな違いから発生します。実務では常に「第三者からどう見えるか」を意識した対応が重要です。

まとめ

いかがでしたか?

本記事では、内定・内々定について、それぞれの法的性質や内定取消し・辞退の考え方、実務トラブルを防ぐための実務上のポイントなどを解説してきました。

内定・内々定は、採用活動の中でも企業の法的責任が問われやすい重要な局面です。言葉の使い分けや運用を誤ると、想定外のトラブルに発展するおそれがあります。法的な位置づけを正しく理解したうえで、社内ルールを整備し、誠実で一貫した対応を心がけることが、円滑な採用と企業信頼の維持につながります。

採用についての制度設計の見直しを検討されている方は、ビズアップの人事コンサルにご相談ください。本記事が内定・内々定の知識を深める一助となれば幸いです。

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